現在進行形で子どもを持つことに挑戦しているLGBTに聞く。  <後編>

2011.1.26

前回に引き続き、現在進行形で「子づくり」に挑戦しているレズビアン女性

Bさん(仮名・38歳)にインタビュー。

 

「子づくり」と言っても、じっさいに性交渉をしているというわけでは

ありません。
Bさんは女性パートナーとの関係を基盤に、

ゲイである子父さん(精子提供者)の協力を得て、

3人プラス子どものあたらしい「家族」づくりに挑戦中です。

 

新春特大のロングインタビューなので2回に分けてお届けします。

<前編>はこちらから ⇒「現在進行形で子どもを持つことに挑戦しているLGBTに聞く。<前編>

  

そして今回の<後編>は、いよいよ「子づくり」の具体的な方法を中心に、語っていただきます!

 

●前回は、「子どもを持とう」とBさんが思うに至ったいきさつや

パートナーさん、子父さんとの関係を伺いましたが、

今回は、具体的な「子づくり」話を伺っていきます。

どうぞよろしくお願いします!

では早速ですが、じっさいに「子づくり」を試みはじめたのはいつからですか?

 

35歳の春からです。
これを読んでいる人の、いちばん興味があるのは、「子づくりの方法」ですよね(笑)。

少しくわしく説明してみます。


まず、はじめの1年は、自力で精子注入をしていました。
知り合いのセクマイの産婦人科医に相談したら、「子父から提供してもらった精子を、針のない注射器で

膣内に入れる方法」を教えてくれたんです。「それで、半年くらい続けてみて、それでも子どもができなかったら、

不妊治療をしている病院に相談してみなさい」と言われました。


具体的に言うと、まず、私が排卵検査薬を使って、排卵日を特定します。その前後の日に、子父さんと会って、

事前に出しておいてもらった精液を受けとって、自宅か子父さんの家で膣の中に入れます。
手順はそれだけ。あとは、2~3週間後、妊娠判定薬で結果を見るだけです。子どもができてなければ、

生理がきてしまいます。


この方法は、費用もかからないし、手軽に始められるのですが、私と子父さんの場合、おたがいに仕事が

忙しくて、排卵日に合わせての精子の受け渡しが大変だったのと、そこまでしてもらったのに妊娠しなかった

場合の精神的な負担が大きくて、あんがいしんどかったですね。


そうこうしているうちに、36歳になってしまいました。35歳をすぎると、どんどん妊娠しづらくなっていくという

知識はあったので、早めに病院に相談することにしました。


●病院へ行くと、どんなやり方になるのですか?

 

「不妊治療を希望する夫婦」というかたちをとって、産婦人科にかかるんです。ここでは基礎体温に加えて、

血液検査によってホルモンの数値をチェックをしてもらうことで、より的確に排卵日を割りだしてもらえます。


はじめの半年は、医師に告げられた排卵日に合わせて、自力での精子注入を続けていました。不妊治療

用語でいう「タイミング法」というやつです。それでもできなくて。
それで、精子注入を医師にしてもらう、いわゆる「人工授精」に踏みきりました。


具体的には、病院内で子父さんがマスターベーションをして精液を出すか、家で出して持参します。

その精液を、病院側で洗浄・選りわけをして、いい状態にしたものを、医師の手で私の膣内に注入して

もらいます。費用は1回あたり、2万円くらいかな……。


これを6回挑戦しました。排卵は、通常月に1回ですから、半年間ですね。人工授精というのは、この方法で

妊娠可能な人は、だいたい6回目までに90%の人が妊娠するそうです。それでも、できなかった。


なので、6回やったところで、次のステップに進むことにしました。もう、38歳目前になっていましたしね。

もちろん、お金はかかるけれど、残された時間や、減っていく可能性を考えたら、ベストを尽くそうということに

なって。


いまは、体外受精をはじめたところです。体外受精というのは、手術で卵子を摘出し、それを受精させて、

子宮に着床寸前の状態にまで育ててから、子宮内にもどして妊娠をまつという方法です。薬も大量に使うし、

手術はあるし、お金はこれまでと比較にならないくらいかかるし、かなり大変で、ちょっと心が折れそうに

なったりしますが(汗)。まあ、それでも、もう少しがんばりたいと思っています。

 

 

断っておきたいのですが、体外受精は、たまたま私が、2年以上トライして子どもができず、また、年齢的に

子どもができづらいから、やっているだけです。

これを読んだ人がトライしたら、体に問題さえなければ、自力か病院での人工授精で、妊娠できるはずです。

安心してくださいね。


●妊娠の確率とはどのくらいなのでしょう?

 

もし、排卵日にジャストで避妊なしのセックスをしても、通常8%くらいだそうです。なんとなく、避妊しなければ

すぐに妊娠しちゃう!という印象がありますけど、じつは、妊娠の確率はとても低いんですね。

「人間は、動物の中でもっとも妊娠しづらい生き物だ」という説もあります。
周囲の、子どもをつくったレズビアンの場合も、トライをはじめてから、だいたい半年から1年以上は

かかっているようですね。

 

 

こうして書いてみると、とても実験的で、情緒のないもののように読めたりするかもしれません。
「子どもをさずかるのは、愛の行為によるべきなのに……」と、生理的な不快感をおぼえる方も、

多いかもしれませんね。
でも、実際に夫婦であるヘテロカップルでも、いまではかなり多くが、不妊治療によって子どもを

さずかっている時代です。
また、「カップル(あるいは家族)の間に子どもを迎える」という行為は、方法はどうあれ、

愛がなくてはなしえないものだと思っています。

 

●Bさんがそこまでして子どもを持ちたい理由はなんでしょうか?

 

「なんで子どもがほしいの?」という疑問への答えは、
理屈ではうまく説明できないんです。
「ただ、子どもがほしいから」、それだけですね。
子どもがほしい女性は、みんなそうなんじゃないかな。
具体的な理由を、すらすら言える人のほうが、少ない気がします。本能……というのは、乱暴な表現ですけど。

……うーん、「そこまでして子どもをもつことの魅力は?」と言い換えるなら、こういうことかも。
同性愛者は、社会的に認められていないぶん、永続的な結びつきに対して懐疑的というか、
刹那的になってしまうところがあると思うんです。
だけど私は、戸籍や社会的な保障がなくても、人と結びつくことはできると信じています。
子づくりという経験は、その結びつきを強める、いいきっかけになっていると思います。
子どものことを考える前は、漠然と「今日と同じように楽しい明日が、ずーっと続いていくといいな…」と
思ってたけれど、いまは「子どもを授かったら、いまの生活は続けられないだろうな。
しんどいことやつらいことも、たくさんあるんだろうな。でも、未来が見えないことに、わくわくする。
なにがあっても、このメンバーで一緒にがんばって行こう」と思ってる感じです。


●ゲイ、レズビアンで子育てすることに、ためらいはありますか?

 

子づくりを始めようかと考えはじめたころ、数年は不安になったこともありました。結婚せずに子どもを産んだら、同僚たちがなんて言うだろう、近所の人がどう思うだろう、とか……将来、子どもがいじめられたら?とかね。
でも、すべての不安より、希望のほうが大きい。きっと、幸せにしてあげられると信じているし、たとえ、問題が

おこったとしても、乗りこえていけると思う。だから、やっぱり子どもがほしいと思うんです。


●子どもが生まれたら、どんな風に子育てがしたいですか?

 

子どもが生まれたら、最初の数年だけでも仕事を減らして、できる限り子どもといっしょに過ごしたい。

パートナーや子父はもちろん、母や、まわりじゅうと助けあって育てたいですね。
今はパートナーと二人暮らしですが、子父さんが望めば、子どもと4人で暮らしてもいいと思っています。

私の母がいっしょに住むという可能性も、あるかもしれませんね。

 

●最後に、これから妊娠を考えるレズビアンへ一言お願いします。

 

「いつか、子どもがほしいかも……」と思っている人は、前もって基礎体温をつけることをおすすめします。

レズビアンで、基礎体温をつけている人って、ほぼ皆無かもしれませんけど、子どもがほしいなら、基本中の

基本。数ヶ月以上のデータがないと、排卵日の目安もつけづらいんですよ。


体温を記録することで、じつは無排卵だったりとか、生殖器関係の病気に気づくこともあります。

病気を治さないと、当然、子どももさずかりませんからね。いまは、記録をつけやすい電子体温計も

ありますから、調べてみてください。


また、子どもがほしいと考えるレズビアンは、どうしても経済的自立をつかむまでに時間がかかって、

出産が後回しになりがち……これは、実体験もあります(汗)。
気がついたら、私のように、トライをはじめたときには高齢出産の年齢だった……ということもあるかも

しれません。


もしも、子どもがほしいという夢があるなら、なるべく若いうちから人生設計をするといいと思います。

これから、このサイト上で、もう少しくわしくレズビアン女性のための子づくりについてまとめていきますので、

ぜひ参考にしてみてください。
「子づくり」という表現をたくさん使いましたが、子どもは、さずかりものです。努力したから、何をしたから/

しなかったから、「できる」とか「」できない」ものじゃないってことを、3年間トライしてきて、つくづく実感して

います。

それでも、レズビアンの場合、夢を抱き、夢をあたため、夢に近づくために一歩一歩進んでいくことなしには、

やはり実現しない。もしも、同じ夢をもっている人がいるなら、いっしょにはげましあって、進んでいけたら

いいなあと思っています。

 

●Bさん、ありがとうございました!

 

 

お話を伺って

 

LGBTにとって、ひとつの壁になるのが「子ども」の問題。

若いLGBT、とりわけL女性たちと話していると、子どもの問題は非常に大きいのだということを

よく感じてきました。

彼女たちの苦しみや迷いを取り除くことはできないけれど、せめてなにかできることはないのだろうか。

そう考えていた時、私はBさんに出会いました。

 

「子どもが欲しい」。その言葉に込められた重みを、Bさんほどの情熱を持って実行されている方も

珍しいのではないでしょうか。

Bさんは今、 高度医療である体外受精に挑戦されています。

 

彼女の話からもっとも強く感じるのは、レズビアン/ゲイだから子どもを持つことはない、と

最初から決めつけてしまうのは「もったいない」ということ。

産むも産まないも、それはもちろん個人の自由。それぞれに幸せな人生があるでしょう。

でももし、それでも子どもがほしいと思うなら、実際にこうしてトライしている先輩がいることを知ってもらいたい。

彼女の選んだ道はまた、いまの日本では簡単ではないかもしれないけれど、彼女はその苦労さえも

歓びにかえる工夫を知っている。そう感じさせてくれました。

 

自然に任せるという選択肢のあるヘテロセクシャルに対して、同性カップルは、自分で決めない限り、

妊娠はありえません。この決断はなかなか勇気のいることでしょう。

 

簡単なことではないけれど、もし、やっぱり子どもがほしい。そう思ったら・・・

あなたはひとりではないんですよ、と、伝えたいと思います。 

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